団塊は第2の人生に燃ゆ
何かが足りない
福岡県 横川秀一(仮名 60代男性)
「これまで仕事が忙しすぎて、人生を振り返る余裕がなかった」と語る。
昭和22年生まれ、今年還暦を迎える。まさに〝団塊世代〟を生きてきた。
大学卒業後、大手スーパーに就職。入社したころは、次々と新店舗を開店していった。
その会社の全盛期を支えるモーレツ社員として、遮二無二働いた。そのやる気と手腕が評価され、業界で広く知られるほどになった。
当時は仕事がすべてだった。単身赴任も11年。家庭や健康を犠牲にして働いたが、毎日が充実していた。
平成15年、会社を辞め、初めて今までの人生を振り返るとともに、今後の身の振り方を考えた時、「何かが、足りない」と感じた。
かつての華々しい業績も、決して今の自分を満足させる力はない。
家にいても、これまでのツケで、家族といま一つしっくりいかなかった。話題がかみ合わず、居心地の悪さを覚えた。
ちょうどそんな時である。東京の友人から、「富山で仏教の講演会があるから、一緒に聞きに行きませんか?」と誘われた。平成18年の報恩講の事である。
「仕事一筋で仏教など眼中になかったけれど、聞いてみてもいいかなと思ってね」
3回は聞いてみようと12月、1月つ続け、地元の講演会にも足を運ぶようになる。人生を苦しみ悩みの波の絶えない海に例え、求めているものはすべて丸太や板きれのようなもの、と教えた難度海の説明が心に刺さった。
「大事なのは心の問題と知らされました」。これから毎月富山県の親鸞会館へ法話を聞きに行きますと決意をした。
最近では、東京や大阪などへ行くたびに友人宅を訪れ、親鸞聖人のみ教えを話すようになった。
「一体どうしたんだ?と必ず聞かれます。おまえも聞けば、必ず共感できる。おれは60年生きてきた経験から間違いないと確信しているんだ、と言うと皆びっくりしています」
先日の親鸞会館での法話には、中学の同級生と肩を並べて聴聞した。
退職を迎える同世代の友人たちをこれからもどんどん誘っていく、と意気盛んである。