「人生とは本当にこれだけのものなのか……」
リタイア後の空しさから一転 夫婦で親鸞学徒に
京都府 Kさん
自ら立ち上げた会社を畳み、代表取締役の座を降りた。
「もったいないと言われましたが、お金や地位にこだわりはありませんでした。それより、人生に何かやり残したものを感じていたんです」
趣味が豊富で、釣りをするにも、一級船舶免許を取り、自分の船を持つほどである。リタイアした当初は、それまで我慢していた趣味を存分に味わった。だが1年が過ぎたころより、「人生とはこれだけのものなのか……」。拍子抜けしたようなむなしさを覚える。Kさんより10年早く仕事を引退していた妻に打ち明けると、同じ思いでいることが分かった。
平成20年2月、地元で、たまたま見掛けた行事案内の「親鸞聖人」の文字に引かれ、夫婦で親鸞会主催の勉強会に参加。「趣味や生きがい」とはまったく次元の違う、「生きる目的」を明らかにした講演に魅了された。
「これが仏教なのか!と驚きの連続でした」と、夫妻は声をそろえる。自宅に親鸞会の講師を招いて勉強会を開き、4月にはそろって親鸞学徒となった。
備前焼など、全国の有名窯元を訪ねるフルムーン旅行が、陶芸好きの2人の楽しみだった。6月、茨城県の笠間焼の窯元を訪れた際、道路沿いの大看板「親鸞聖人御旧跡」の文字が目に飛び込む。聖人が真宗の根本聖典『教行信証』を執筆し、関東布教の拠点とされた稲田の草庵跡だった。
親鸞聖人のアニメを何度も見ていた夫妻は、弁円済度のシーンが脳裏をよぎる。「ここであのドラマがあったのか……」。ともに感慨に浸った。
「そんなつもりはなかったのに、気がつくと聖人のご旧跡にいました。聖人のお手回しと思い、それからは、趣味より聞法第一になったんです」
今ではチラシ印刷、参詣者への案内を率先して引き受け、夫婦で楽しく、生き生きと光に向かっている。