脱・ひきこもり

 

イラスト・引きこもり・親鸞会・公式

社会に居場所を失って、自室に引きこもる人たちは現在、150万人以上いると言われる。学校に行かせたり、仕事に就かせようと躍起になる周囲に対し、彼らは無言で問いかける。「なぜ学校へ行き、なぜ働かねばならないのか?」

現在溶接工場で元気に働く梶原悟さん(仮名)も、かつては引きこもりの青年だった。外へ出て生き生きと生活できなかった原因はなんだったのか?立ち直るまでの心の軌跡をたどり、社会問題化している「引きこもり」の提起する問題を、ともに考えてみたい。

    ※     ※    ※    ※

「学校なんかやめて、ロックバンドをやろう」
高校2年の秋に、悟は決心した。狭い教室に閉じこめられ、やりたくもない勉強で競争させられる学校がもともと肌に合わなかった。

幼いころから歌が好きで、ビリビリ頭蓋骨に響き、全身に震えが伝わるほど絶叫する快感は、面倒な人間関係も全部忘れさせてくれた。歌で生きるくらいなら勉強は要らない。成績不振で留年が決定した高3の冬、悟は中退を選んだ。

先のことは何にも考えていなかった。バイトで得たお金で音楽学校に通い、バンド仲間とライブで叫ぶのが最高の楽しみだった。夢によい、現実と向き合おうとしなかった。
それから4年が過ぎた。周囲の目も厳しくなっていく。

「本気で音楽で食べていくつもりなのか?だったら東京へ行ってこいよ」

煮え切らない悟に、仲間たちもいらだちを感じていた。思い切って上京するか?しかし、厳しい音楽業界で生き残れる個性も力もない。それは悟自身、よく分かっていた。

「頑張れよ」。叱咤激励する仲間の言葉も、優柔不断さを冷笑されているようで、かえって落ち込ませた。やがてバンドは自然消滅する。

引きこもるようになったのはそれからだった。ちゃんとした仕事に就いたり、専門学校に通うような時期を逸し、自分の居場所がどこにもないことに気がついた。楽しみだった音楽活動がなくなると、何をする気力も起きない。前へ進もうにも道がなかった。

引きこもりのはじまり

昼に目覚めて、テレビを見る。気分転換に散歩し、夕食を食べ、風呂に入り、そして寝る。ただそれだけの日々。

何もしない。それがこんなにもつらいこととは思わなかった。

だが外へ出て、困難に立ち向かう勇気が出ない。必死で生きている人もいるのに、部屋でボーッと、飲み食いしている自分に、吐き気がするほど嫌気が差した。自己嫌悪するほど、気力が萎える。すべてが悪循環だった。

することがないと「お前は生きている価値がないのだ」という声なき声が、ぐるぐる頭を駆けめぐる。ベッドに横たわり、いつまでも天井を見つめて思った。
「地球も太陽もいずれ消滅する。おれなんかがいて何になる……」
ギターを手にし、好きな曲を口ずさんでも、心から燃えることはなかった。心は暗い雲に覆われ、生きること自体が重荷だった。すべてを投げ出したい。

「明日こそ死のう」
そう言い聞かせて、眠りに就いた。

転機は、親鸞会会員の姉から

そんな3年前の11月、夕食を済ませて部屋に戻ると、誰かがドアをノックした。7年間、ろくに口も聞かなかった姉・さゆりだった。

「これ、読んでみなよ」
優等生だったさゆりが、手渡した本には、「なぜ生きる」と書かれてあった。
「私、富山の親鸞会館まで、仏法を聞きに行っているの。人生の目的を教えられた親鸞聖人の教えについて聞かせていただけるのよ」。そう言うと姉は、少しぎこちない笑顔で部屋を出て行った。
訳も分からぬまま本を開くと、冒頭から、たちまちのめり込んだ。そこには言葉にならなかった悟の不安がズバリ表現されていたからだ。モヤモヤ混沌とした心の中が、言葉で表現されている。うんうん、そうそうと共感し、なるほど、そういうことかと心が整理されていく感覚に、ページをめくるのを悟は止められなかった。

とりわけ衝撃を受けたのは、この言葉だった。

――ラッセルが『幸福論』で「道楽や趣味は、多くの場合、もしかしたら大半の場合、根本的な幸福の源ではなくて、現実からの逃避になっている」と言っているように、「趣味に熱中する楽しみ」とは、苦痛を一時的に忘れる時間つぶしといえるかもしれません。(「なぜ生きる」)

「そのとおりだ。おれは人生最大の悲劇である死から目をそらし、ごまかしていただけだった気がする」

一方、さゆりは心配だった。「あの本、ちゃんと読んでいるかしら」
姉と弟とはいえ、これまでお互いの悩みを語り合うこともなかった。ただ、悟の仏縁を念じ、幸せを願った。

悟は読み進むほどに、人間は結局、幸せになれないのだろうかという疑問と、本当の幸福があるならば知りたいという欲求に突き動かされていた。

そして、半月後のある日、
「姉ちゃん、富山のお話、今度はいつあるん?」
突然の悟の言葉に、さゆりは目を丸くした。まさか弟が、自分から「聞きたい」と言い出すなど思ってもいなかった。とりあえず、地元で開かれる親鸞会の講演会に一緒に参詣することになった。いわゆるニートの特権とも言うべきか、仕事はないが時間はある。日中毎日のように、地元での親鸞会の講演会に出かけるようになった。
そして翌年2月、初めて親鸞会館に参詣した悟は、親鸞会の会員となった。

「引きこもるプロセスはいろいろあるでしょう。でもそこから動き出せない根本は、なぜ生きるかが分からない。分からないのに、なぜ苦しんでまで学校へ行くのか、仕事をするのか、心の整理がつかないところにあると思うのです」

人生の目的が鮮明であれば、「そうだ、このために働くのだ」と、働く意欲が湧いてくる。

〝 労働意欲の一番の元は、人生の目的を知ることだ〟

悟は、こうして新しい人生のスタートを切った。

※参考資料

図 13歳~34歳の人口に占める非通学・非家事の非労働力人口比率
                          (平成2年~15年)

グラフ・ニート・引きこもり推移

(※ 総務省 明日への統計2004より)

ニート少年が大変身

外部リンク

労働力調査 長期時系列データ | 総務省

図録▽フリーター数・ニート数の推移 | 社会実情データ図鑑

 

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214“名号本尊”は親鸞聖人のお勧め
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212"命は平等"ってホントなの!?
211まどろみ人生 スイッチオン!
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207父の遺言「本尊は御名号」
206「友よ、はらからよ」
205「これこそ真の浄土真宗や」
204真宗の正しい御本尊
203素晴らしい仲間と過ごした 素晴らしき日々
202凄いことを聞いていたんだ
201「仏法聞かせてもらいや」亡き叔母の願い
200>父母の恩 重きこと 天の極まり無きが如
199体験話に迷わされた23年
198非行・非善の念仏 探し続けた その真意
197三木清から『歎異抄』へ
196>親鸞聖人の教えを聞くのが好き!
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186父のメッセージ 今も心に
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174住職の意外な言葉「御名号こそ浄土真宗の正しい御本尊」
173仏法に生き 会計士の道 開く
172友の人生の疑問から、親鸞聖人の教えへ
171同朋の里だから語り合えること
170ホテルと大違い 自然と信心の沙汰
1692人で182歳 幼なじみと
16890代車いすで夫婦そろって
167元気の源は仏法に
16640年求め 親鸞聖人の教えと再会
165教えを伝える遺弟が「真宗万年の礎」に
164最も困難で素晴らしい道
163親鸞学徒に孤独なし
162家族揃って親鸞会館へ
161親のご恩 仏縁あればこそ
160夫婦で親鸞学徒に
159「聞法したくて 日本に移住しました」
158夢のプランに至福の日々
157親鸞聖人のみ教えで一つに2
156親鸞聖人のみ教えで一つに
155正御本尊をわが家に
154香川から移住 毎日が幸せ
153万人が同じ喜びの世界へ
152後生の解決一つのため
151「ドメインの力、感じます」
150親鸞聖人降誕会参詣者の声
149前田町に参詣以来 40年ぶり
148聖人のお勧めどおりに
147教えて還る子は知識なり
146同朋の里で深夜まで語らう
145届けたい真実
144「ロシアより愛をこめて」最終回
143同朋の里は浄土の光景
142「ロシアより愛をこめて」第4回
141加速する御名号本尊への流れ
140「ロシアより愛をこめて」第3回
139プロ棋士の向こうに見えた限界
138『歎異抄』のマジック
137平生業成に大ショック
136夢の聞法ドメインで全力
135あの時死ななくてよかった
134心かよう作業療法士に
133恩師に『歎異抄をひらく』
132妻からの法灯 家族にともして
131御名号本尊へ大きな流れ
130仏法で「食」生き返る
129ハイデガーの渇望した無碍の一道
128信心の沙汰は 真宗繁昌の根元
127〝黒板〟の先生と、30年ぶりに再会
126「ロシアより愛をこめて」第2回
125父を変えた弥陀の大願力
124信心の沙汰で、 仏法が自分の問題になる。
123厳しく心見つめ
122信頼厚い名医
121ナターシャの「ロシアより愛をこめて」
120“歎異抄”の真意海外へ 二千畳に米国教授も参詣
119いつまでたってもキリがない
118無気力な少年が一転 医師を目指す
117顕真学院の研修に参加して
116哲学書を読みあさっても分からなかったこと
115徹しきられた浄土の慈悲
114「煩悩具足」の聞き誤り
113〝ただ念仏〟の〝ただ〟に驚く
112唯円が生きていたら
111越せぬ壁の内側から
110『歎異抄をひらく』で生まれ変わる『歎異抄』
109龍谷大学でも聞けなかった「一念」
108光は東洋にあった
107歎異抄とは
106やっと遇えた 真実の仏法
105仏法とのご縁は末代の宝
104どんな姿でも生きねばならない理由
103『歎異抄』読めど分からず
102親鸞会で知った、歎異抄の本当の意味
101疑問だった「死んだら極楽」
100毎日楽しければいいと思っていました。
99正信偈を教えてもらえる。行こう
98いじめで死ななくてよかった
972000畳の親鸞会館に感動
96脱・ひきこもり
95私も親鸞会会員に 八十八箇所 彷徨の果て
94ポジティブなエンジニアになれる
93私も親鸞会会員に 97歳 平生業成に驚き
92ニート少年が大変身
91サイデンステッカー教授
90『正信偈』にこんな意味が
89因果の道理を信じて、苦境を越えた
88宗教は何を救う!?
87かくて少年はニーチェを捨てた
86彫刻と私 光はさした
85山で暮らしても
84正しい教えは、2000畳をも狭くした
83上を目指してきたけれど
82なんのために勉強をするのか
81太宰治もわからなかったこと
80今、死ぬわけにはいかない
79正信偈の意味が分かった
78亡き妻に感謝
77こうまでして仕事をしなければならないのか
76生長の家から親鸞聖人の教えに
75働くために生きているのではない
74会計士の本当の仕事
73因果の道理を知ればこそ
72生きてきた中で一番幸せ?
71尊い人命 ロボットで救う
70瞳に光 聞法の夜明け
69会社人間で終わりたくない
68患者の立場に立った医療を
67家族で仏法を
66人生の荒波に翻弄されている人に、真の幸せを
65仏法がその答えを教えてくれた
64利他の精神でカウンセリング
63これこそ真実だ!と思いました
62仕事を元気に続けられるのは聞法あればこそ
61自己を磨く
60感謝の心で乗り切る
59因果の理法を仕事に生かす
58「なぜ生きる」の光をすべての人に
57広告のスペシャリストに
56何かあるに違いないと思った
55「因果の道理」が仕事の推進力
54万人共通のもの ?生老病死?
53頭上に満天の星
52モンゴルでの生活
51ハラホリンの草原をゆく
50大草原の風の説法
49自殺危機からの救出 人生の目的あればこそ
48ジャーナリズムの現場から
47突きつけられた問い"なぜ生きる"
46ある医学部生の体験
45北国から2000キロ 無常との競争
44聞法だけが人生の価値ある時間だった
43友の言葉が突き刺さった
42自殺願望の果てに
40難問にであう
39真の医療って?
38団塊は第2の人生に燃ゆ
37涙の底に光あり
36もっと『不都合な真実』
35世界が生き返った
34修羅場なればこそ
33生んでくれてありがとう
32何で俺を生んだんや
31自殺してはならぬ理由
30こんなまめな人とは知らなかった4
29こんなまめな人とは知らなかった3
28こんなまめな人とは知らなかった2
27こんなまめな人とは知らなかった1
26人生は無意味ではない
25蓮如上人のお言葉に感動
24死んだら楽になれるのか
23自殺は愚かな行い
22子供たちに生命の尊厳を
212000畳で真如の月を
20両親との問答
19あっという間の二日間
18一念で千古の闇室に光
17聖人の大きなご恩
16摂取の光明に包まれ
15白骨の章
14死の恐怖体験
13ひきこもり寸前だった私が…
12私は仏法で自殺を思いとどまった
111%の希望が実現
10今日はいちばん幸せな日
9これが仏教だったのか!
8輝きだした生徒の瞳
7生きる光 ここに
6心渇き、荒れた少年時代
5「仏説まこと」を実感
4法友と励まし合って
3心にズッシリ「なぜ生きる」の重み
2慕われる医師に
1何のための延命治療か

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