三大諍論(じょうろん) 7

信心同異の諍論 2

快く許しを得られた親鸞聖人は、早速「信不退の座」と「行不退の座」を設定なされ、380余人の法友を集めて、厳かに申されました。

「本日は御師法然上人の認可を頂き、皆さんにぜひお尋ねしたきことがございます。ごらんのとおり今ここに、行不退の座と信不退の座を設置いたしました。いずれなりとも各自の信念にも基づかれて、お入りください」

と、おっしゃいました。

不退とは絶対の幸福のことですから、その絶対の幸福になるには、行(念仏)でなれるのか、はたまた、信(信心)でなれるのかという問題が、行不退か、信不退かということなのです。

釈迦出世の本懐、十方衆生の救われる唯一無二の弥陀の本願は、念仏称えれば助けるという誓いなのか、信心1つで救うという誓いなのか。

親鸞聖人の投じられたこの問題は、法然門下380余人を驚かせ、戸惑いさせる大問題であったのです。

すでに本願には、至心、信楽、欲生の信心と、乃至十念の念仏とが誓われていますし、法然上人は『選択集』に、

「弥陀如来、法蔵比丘の昔、平等の慈悲に催されて、あまねく一切を摂せんがために、造像起塔等の諸行をもって往生の本願となしたまわず。ただ称名念仏一行をもって、その本願となしたまえり」

また、
「名を称すれば、かならず生ずることを得、仏の本願によるがゆえなり」
とあります。

これらのご文が、彼らの脳裏をかけめぐったことは想像に難くありません。そして何を今更、信行両座に分ける必要があろう、念仏(行の座)に限ると、心中叫んだことでありましょう。

果たしてその実、決然として信不退の座についた者は、信空上人と聖覚法印、熊谷蓮生房の3人しかいなかったのです。

その他の380余人は、その去就に迷い判断に苦しみ、一言ものぶる人がなかったと、『御伝鈔』には記されています。

覚如上人は「これ恐らくは、自力の迷心にかかわりて金剛の真信に昏きが致すところか」と喝破なされていますが、まことにそのものズバリであります。

やがて、親鸞聖人も署名されて、信不退の座に進まれたのは当然至極のことであります。

かくて最後に380余人、注視の中に「法然も信不退の座につきましょう」と、法然上人も、また信不退の座につかれました。

「そのとき門葉、あるいは屈敬の気をあらわし、あるいは鬱悔の色をふくめり」と『御伝鈔』に書いてありますように、一応は驚いてへり下りはしましたが、それは自分らの信心の不徹底さを懺悔してのことではなく、「よくもお師匠さまの前で大恥かかしてくれたな」という聖人に対する憤りの後悔であったのです。

これが原因で親鸞聖人は、法友からことごとく白眼視され、ついには背師自立の恩知らずと罵倒されるようにまでなったのです。

背師自立の攻撃も、孤立無援も覚悟の上で、親鸞聖人はなぜに380余人の法然門下の中に、信行両座を分けられねばならなかったのか。

いくたびも廃立を先として信心正因を明示されても、行に迷い信に惑い易き人々はまたしても念仏に腰を据えようとするのです。

曠劫流転の自力の親玉が最後に逃げ込む牙城が、この念仏なのです。

ゆえに、これは決して700年以前の法然門下においてのみあった戦いではありません。

現今の浄土真宗の中においても、信行両座の戦いは絶えず繰り返され、それは龍華の御代まで続くことを覚悟しなければなりません。

 「信行両座の諍論」 「承元の法難」

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