私と50周年 9

■ 浄土真宗親鸞会結成50周年

逃げても逃がさぬ
大悲の網に

富山県 Aさん

遊興三昧でも晴れぬむなしさ
 探し求めた幸せ、今ここに

「2000畳の大講堂! 素晴らしい設備! ああ、こんな素晴らしい環境で、高森先生は、親鸞会は、私をずっと待っていてくださった!」──。
20年前、青年層きっての“元気印”だったAさんは、「しばらく休ませてください」と書き置きを残し、突如、姿をくらました。法友の心配をよそに遊興にふける日々。だが逃げても逃がさぬ弥陀光明の網の中、気がつけば2000畳に。愛妻と2人の子供も一緒だった。

 駅前で声をかけた女性に、喫茶店で仏法を話した。「金も恋愛も相対の幸福といって必ず崩れる幸福だ。そんなものは人生の目的じゃない!」そう言いながら、目の前の女性に心を奪われている。心裏腹の話に力はなく、相手はけげんな顔でその場を去った。
「ああもう限界だ……」

 昭和63年、聞法して4年めである。騎虎の勢いで仏法を求めたものの、何か違和感を感じ始めていた。高校時代の友人たちは、仕事も恋愛も充実し、自分より余程人生を楽しんでいるように見える。
「続かない幸福だろうと、何だろうと、自分が幸せと思えることを気の済むまでやりたい。押し込めた思いが爆発したんです」

 仏法から一切遠ざかると、やりたいことを片っ端から実行した。建設関係の会社を立ち上げ、ネットワークビジネスも始めた。地元の青年団に入り、持ちまえの明るさでたちまち人気者になった。主な活動は福祉や行政の学習会だが、団員の目当ては合コン。男女の出会いの場であった。

 平成5年、高岡市が主催する日本最大級の市民野外劇「越中万葉夢幻譚」(※)の主役、大伴家持役に抜擢され、地元紙にも大きく紹介された。

 結婚し、仕事も順調、交友は広がり、理想の生活のはずだった。「ビジネスのピンチも、常にプラス思考で乗り切ってきましたが、『儲けたところで死ぬ時どうなる?』かつて聞いた仏法がふと思い浮かぶと、仕事も遊びも、急に熱が冷めてしまって」

 何かを忘れようとするかのように、酒量は増え、遊びも派手になり、休日は1500ccの大型バイクで日本中を走り回った。5月の連休、1人で奥飛騨のドライブウエーを爆走した時、仲間と一緒の時には感じたことのない寂寥感に襲われた。

「それは目的地も定めず突っ走ることの、言いようのないむなしさでした。オレ、何やってんだ?という感じです。まるで自分の人生と重なるようで、途中で山から引き返してきました」

 ある日、知り合いの葬式に出ると、親鸞会の葬儀が行われていた。親鸞会の講師の説法に懐かしさが込み上げる。離れて18年がたっていた。

 その後、地元の親鸞会講師ら連絡が来た。ファミレスで会い、そこで「人間の実相」の絵を見せられた。目をそらしてきたことを、バーンと見せつけられた思いがした。返す言葉がなかった。もう自分の心をごまかし切れない。やっぱり仏法を聞かなくては満たされないと、親鸞学徒を申し出ていた。

 再び学徒となったものの、家で仏法を聞いているのは自分だけ。煮え切らぬ聞法求道が続く。そんな時、事件は起きた。
「お父さん、ぼく死にたい……」

 小学校でいじめに遭った長男が、思い詰めた様子で打ち明けてきた。ショックだった。
「大人になったらいくらでも楽しいことあるのよ。苦しくても死んだらダメよ」。必死に説得する妻の言葉を聞きながら、胸が痛んだ。苦しくてもなぜ生きる。本当の答えを知りながら、最愛の妻子にさえ伝えぬ自分がふがいなかった。

 学校に対策を求め、いじめは収拾したものの、最も伝えたいことが、今の自分では何も伝わらないことに耐えられなくなった。
 妻にこれまでの一部始終を話し、家族で聞法したいことを伝えた。本気のあかしに、食後の食器洗い、部屋の片付け、草むしりと、家族のため、できることは何でもやり“遊び人”の人生から足を洗った。

 その姿に、家族もようやく信用し、聞法会場に足を運ぶようになる。「うれしかったです。探し求めた幸せは実はここにあったんだと思いました」 
 大型バイクは売却し、そのお金で仏壇を求めた。今光に向かえるのも、妻子のおかげ。無上仏に手を合わせる家族の後ろ姿がいとおしかった。

「もう迷わない」。そう誓うAさんは、夫として父として、再び親鸞会会員として、親鸞聖人の教えを自他ともにすすめはじめた。

※越中万葉夢幻譚……市民参加型の野外音楽劇として全国的にも有名。高岡古城公園で、約1000人の市民俳優が、夏の夜に幻想的な歴史スペクタクルを繰り広げる。

 

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